四国、いいんですよ
大学を卒業後、私は一年間ほどフラフラして
それから何となく就職しまして。
実家が大好きなわけでも
地元が大好きなわけでもありませんでしたが
ここにいたくはないけどお金もないし、
お金がたまったら出ようと
実家から通える会社を選択。
そしたらなぜか東京で働くことに
なってしまいまして。
東京なんて、一生ご縁のない、
海外よりも遠い遠い世界、
と思っていたのですが。
気がつけば、
私の地元、四国で過ごしたよりも長い時間を、
ここ関東地方で過ごしております。
幼少期の頃の記憶ってなぜだか、
すごく鮮明だったり、
そうではなくても
心に沁みついて離れない、
そんなものだったりします。
我が家は四国の外に出ることが
本当に少なくて
私は四国以外の世界を
あまり知らずに育ちました。
その代わり
四国の中は色々なところを訪れました。
車で。
田舎はどこもみなそうなのですが
「電車」というものでは
どこに行くのにもとても不便だったのです。
いつも通る工場横の道路がとんでもなく
臭かったり
車の中で吐いてしまったり
そんなこともありましたが
車が嫌だったな、という記憶はないように思います。
(逆に、臭くてきゃー♡とはしゃぐという)
それよりも
車窓から見える四国山脈の向こうで
暮らしている見知らぬ人たちに
想いを馳せて切なく思ったり
海を見るたびに嬉しくなったり
回り続け、彼らの歌が
繰り返し聞こえてくるので
すっかり覚えてしまったり
(これは、大きくなった後に
会社の人たちと行くカラオケで
大いに役に立ちました。)
楽しいことがたくさんありました。
今は『御朱印帳』などという
かわいらしい手帳があるのですが
私たちが持っていたものは
冊子状ではなく「掛け軸」の形をしていて
それが筒に入っていたのです。
そしてお寺などに到着すると、
われ先にとその掛け軸を姉弟と奪い合い
(背中に掛けるのが、ニンジャみたいで
おもしろかった)
マス目のついたその掛け軸を広げて
お寺の人に押印してもらうと
ステージを一つクリアしたような、
「合格印」が押されたような、
コレクションが一つたまったような、
そんな気分で嬉々としたものでした。
香川県の小豆島の猿が怖かったこと
徳島県の山奥の長いトンネルにワクワク
したこと
とてもたくさんの情景が
今でも瞬時に浮かんできます。
今は年に一度
夏に子どもたちを連れて四国に戻っています。
学校が新しくなっていたり
思い出深い建物が取り壊されていたりして
変わったなあ...と思うこともありますが
山と海と自然の風景とワンマン電車と
いつまでも変わらず迎えてくれる風景も
そこにあります。
今年は
私が子どもの頃にはなかった
しまなみ海道が通る、
子どもたちと一緒に
「初めての愛媛」を体験してきました。
大人になって改めて
「自然って宝物」ということがわかって
意識するようになってから
四国の色々なところが貴重で素晴らしくて
もっと行ってみたい、
そんなところに思えてきて
(本当はずっと変わらず素晴らしかったのに)
今年の帰省はいつもよりもたくさんの場所に
出向きました。
美味しいとか
愛媛のゆるキャラ『みきゃん』がいるとか
(かわいくて子どもたちのお気に入り)
知らなかったこともたくさん。
四国の田舎で育って
でも何となく心の準備もないまま
東京に来ちゃって
都会の電車が長すぎてびっくりしたり
満員電車に笑えてしょうがなかったり
しましたが
そんな体験があったからこそ
今わかったこともある。
来年はどこに行こうかなあ
何を食べようかなあ
夏の楽しみがぐんと増えた、
今年の四国滞在でした。